カリフォルニアのジンファンデル―4―テロワールの異なりによって
様々な表情を見せるジンファンデル
(2016.05.22)
ソノマ随一のジンファンデルの産地、ドライ・クリーク・ヴァレー。ジンファンデルの名声に寄与した地であり、現在も高い評価を得ている。方やソノマの北に位置する冷涼なメンドシーノは近年多くの関心を集めている栽培地。そんな両産地の注目ワイナリーをレポートする
ダッチャー・クロッシング・ワイナリー Dutcher Crossing Winery Sonoma
ドライ・クリークらしいバランスのとれたジンファンデルを生む
ソノマの中央よりやや北に広がるドライ・クリーク・ヴァレー。ジンファンデルの産地として高い名声を誇ってきた。ソノマはカリフォルニアで2番目にジンファンデルの生産量が多いが、産地全体で栽培されているわけではなく、ここドライ・クリークが中心。温暖な気候で、地中海沿岸をオリジンとするジンファンデル種の生育に適した地として、100年以上にわたってワインを生んできた。
ガイザーヴィルの西、5、6キロメートルに位置するワイナリーは、近くを流れるダッチャー・クリークとドライ・クリークが交わるところにあることからこの名に。所有するのはデブラ・マーシー。学生時代からヨーロッパを行き来し、ワインの魅力にはまり、自らのワイナリーを持つのを夢見るようになる。ウィスコンシンで木材と石油で財を成した父から援助を受け、夢がかなったのは2007年、晴れてダッチャー・クロッシング・ワイナリーのオーナーとなった。
トータル1万2000ケースほどの生産量と決して規模は大きくないが、ワイナリーでは毎年20銘柄弱をリリースする。なかではジンファンデルが5種類と最も多く、そのうちの4銘柄がドライ・クリーク・ヴァレー産。各銘柄のロットは小さく、少ないものは200ケース、ワイナリーで最もポピュラーなプロプライエターズ・リザーヴ・ジンファンデルでも600ケースの生産量しかない。
少量のプティ・シラーなどがブレンドされたワインは、アルコールも基本的に15パーセントまでに抑えてあり、ジンファンデルらしいたっぷりした果実味ながらも、重すぎることのないバランスのいいもの。
ナヴァロ・ヴィンヤーズ Navarro Vineyards Mendocino
冷涼なテロワールから生まれる、美しいエレガントなジンファンデル
サンフランシスコから北へ200キロメートル弱、ソノマのさらに北に連なるワイン産地メンドシーノ、その中心地フィロの町にナヴァロ・ヴィンヤーズはあり、テッド・ベネットとデボラ・カーン夫妻が息子アーロンと妹のサラ、4人の家族で運営する。
テッドは、ブラス・ロック華やかりし頃の1969年から1975年までコロンビア・レコードで副社長を務めていたという経歴の持ち主。当時はフラワー・ムーヴメント真っ盛り、スクウェアな同僚らとうまくいってなかった彼は好きなワインづくりを模索、愛飲していたアルザスの白にピノ・ノワールの適地を探し、メンドシーノに辿り着く。そして畑を購入、1974年からワインの生産を開始するが、現在ではメンドシーノのパイオニアとして、その生み出すワインとともにリスペクトされる存在。
冷涼といわれるメンドシーノだが、最も広く見られるのはシャルドネで次がピノ・ノワール、そして3番目に多く栽培されているのがジンファンデル。ナヴァロではレギュラーとオールド・ヴァイン(ユーカイア・ヴァレーからの樹齢60年以上の古木を使用)の2種類を生産していて、双方ともにフリー・ラン・ジュースのみを用い、オープン・トップのタンクでの発酵後、フランス産の樽で1年弱熟成させボトリング。
テロワールの異なりやつくり手のセンスによってさまざまな表情を見せてくれるジンファンデル。ナヴァロのそれはアルコールも14パーセント台で、口当たりもやさしくバランスのとれたエレガントなタイプ。ピノ・ノワール好きにもお勧めしたいジンファンデルである。