ストーリーのあるワインと暮らし

Wine & Story

ガンベロ・ロッソ -1-イタリアワインガイドの決定版
ガンベロ・ロッソ 日本版登場

(2014.08.20)

イタリアワインのガイドブック、ガンベロ・ロッソ(Gambero Rosso)の「ヴィーニ・ディ・イタリア(Vini d’Italia)2014」の日本語版が発売になった。ガンベロ・ロッソといえば、イタリアワイン好きにはよく知られたガイドブックだが、どんなものなのか。あらためて解説してみたい。
イタリアのガイドブック事情
実はイタリアはガイドブック文化の国である。ガイドブックといったら「ミシュラン」のフランスと考えがちだが、レストランにおいても、ワインにおいても、イタリアの充実ぶりには遠く及ばない。ワインについていえば、イタリアには、ガンベロ・ロッソの他にも、ヴェロネッリ(Veronelli)、レスプレッソ(L’Espresso)、ルカ・マローニ(Luca Maroni)、イタリア・ソムリエ協会(Associazione Italiana Sommeliers)が年度版のガイドを刊行しており、デイリーワインや産地別のガイドもある。

レストランガイドも同様だ。ここでも中心になるのは、ガンベロ・ロッソだが、やはりヴェロネッリ、レスプレッソ、スローフード協会(Slow Food Editore)のものなど、数多く出版されている。イタリアではだいたい毎年11月になると、翌年の年号の付けられた新しい版が一斉に発売となり、書店のガイドブックコーナーに山積みされる。

日本には、ホテルにしても、食にしても、全国を網羅する信頼できるガイドブックは、ひとつもないが、ヨーロッパにはこういうものを作り続ける文化がある。特にイタリアでは、こうしたデータの集積は価値のあることとされ、学校でもカリキュラムに組み込んで学ばせているという話だ。ガンベロ・ロッソは、そうしたイタリアのガイドブック文化の中心である。

ガンベロ・ロッソ イタリア版2014
ガンベロ・ロッソ イタリア版2014
ガンベロ・ロッソ 日本語版2014
ガンベロ・ロッソ 日本語版2014
ガンベロ・ロッソとはなにか?
もともとガンベロ・ロッソとは、1986年に左翼系の新聞「マニュフェスト」の特別付録として始まった食とワインの情報誌だが、1992年に月刊誌として独立し、イタリアの飲食業界に大きな影響力を持つ雑誌へと成長している。ガンベロ・ロッソのワインガイドは、雑誌よりも古く、1987年に1988年版が初めて出版された。その後、毎年、年度版が発行され、1991年からドイツ語版、1998年から英語版、2012年からは中国版も作られている。実はこのガイドブック、通称ガンベロ・ロッソと呼ばれてはいるが、当初はガンベロ・ロッソ社の単独編集ではなかった。2009年版まではピエモンテで生まれたスローフード協会との共同編集で、ガンベロ・ロッソ(赤いエビ)とスローフードのカタツムリ、2つのシンボル・マークがついていた。飲食文化の向上を目指す2つのグループの象徴的な活動であったのだ。

このガイドブックは、2014年版を例にとってみると、イタリア全土の2360のワイナリーの2万本のワインを掲載し、そのワインをグラスの数で格付けしている。グラスひとつは水準以上、ふたつはすばらしい、3つ(トレ・ビッキエーリ)は最高位で喝采ものという評価となる。2014年版では、415の銘柄がトレ・ビッキエーレに輝いている。また、これまでにトレ・ビッキエーリをとった回数でワイナリーの評価をしており、10回のトレ・ヴィッキエーリ獲得に星1つを与えている。この星の付け方は、サッカーのセリエAと同じ方式で(優勝30回のユヴェントスは星3つ、ミランとインテルは星1つ)、最高位は51のトレ・ビッキエーリに輝く、アンジェロ・ガイアの5つ星である。

この本の評価の特徴は、その年リリースされる同じカテゴリーのワインの中でどれがよいかを判定することにある。毎年、イタリア全土のワイナリーや、地域ごとにあるワイン生産者組合からサンプルのワインを取り寄せ、同じヴィンテージ、同じカテゴリーごとにブラインドテイスティングして格付けしていく。テイスティングするのは、ガンベロ・ロッソの60人のエキスパートたち。およそ4万5000本をブラインド・テイスティングし、2ビッキエーリまでの格付けと次の段階に残すワインを決定。そのトレ・ビッキエーリ候補を最終的にローマでファイナルにかけ、トレ・ヴィッキエーリを決定する。

この評価システムに対しては、すべてのワインが同じ基準で評価されているとは言い難いという指摘がある。ガンベロ・ロッソでは、同じカテゴリーのワインごとに優劣を付けるために、ビッキエーリの評価がイタリアワイン全体の中での評価を示していない。また、産地ごとのテイスティングのために、ポテンシャルの低い地域の秀でたワインに点が甘く、逆に銘醸地のワインに辛くなる傾向がある、などだ。私も、その問題点を感じている一人だが、そもそも格付けは絶対的なものでなく、人によって評価が異なるものである。ガンベロ・ロッソが、イタリアワインのガイドブックとして、充分過ぎるほどに役割を果たしていることは、疑いようもない事実である。

ガンベロ・ロッソ日本語版発表会
2014年6月6日、イタリア文化会館東京、アニェッリホールにおいて「ガンベロ・ロッソ イタリアワインガイド日本語版 発表会」が開催された。発表会には、写真左から、翻訳者の宮島勲さん、ガンベロ・ロッソCEO・ルイジ・サレルノさん、イタリアワインガイド編集長・エレオノーラ・グエリーニさんとマルコ・サベリコさん、講談社社長・野間省伸さんが登壇した。

翻訳者の宮島さんは、イタリアワインに精通したジャーナリスト。かつてローマでの新聞社時代、まだ創刊前のガンベロ・ロッソ関係者と一緒にテイスティングしていたというから、ガンベロ・ロッソとの円も深い。翻訳は彼以外には考えられなかっただろう。

また、今回の出版、出版人には採算を度外視したプロジェクトに見える。さすがは講談社と思ったが、さすがに講談社もただでは転ばない。野間さんは壇上で「神の雫」のイタリアでの出版を約束させたと語っていた。いずれにしても、ガンベロ・ロッソの日本版発売、とてもいい話だ。