イタリアワイン・ランキング ガンベロ・ロッソが選んだ
イタリアのベストワイン 2020
(2019.11.21)
イタリアワインのガイドブック、ガンベロ・ロッソ(Gambero Rosso)の「ヴィーニ・ディ・イタリア(Vini d’Italia) 2020年版」の特別表彰ワインを紹介する。ガンベロ・ロッソは、イタリア全土のワインを厳格に格付けして、その評価をグラスの数で示している。その最高評価トレ・ビッキエーリ(3グラス)の中から、各ジャンルの最上位が特別表彰を受ける。ガンベロ・ロッソが選んだ現時点のイタリアのトップワインである。
特別表彰ワインは、日本では2019年10月30日に行われた「ガンベロ・ロッソ・トレ・ビッキエーリ2020」の特別賞セミナーで紹介された。登壇者は写真左から、ガンベロ・ロッソ・ワインガイド副編集長ジュゼッペ・カッルスさん、編集長マルコ・サベリコさん、日本版翻訳者の宮島勲さん。
スパークリングワイン・オブ・ザ・イヤー
ヴァルドッビアデネ・ブリュット・ナチュール・パルティチェッラ232 2018 /
ソレッレ・ブロンカ
スパークリングワインのNO.1、今年はプロセッコ。このワインは、プロセッコの名産地、ヴァルドッビアデネ地区のプロセッコ・スペリオーレという格付けになる。パルティチェッラ・232というのは土地台帳の番号で、この区画のスペシャル・キュヴェという意味。残糖2グラムでブリュット・ナチュールというカテゴリーのワイン。残糖がないことで、フレッシュさとミネラルや柑橘類のニュアンスが鮮明に出ている。並のプロセッコではなく、傑出したプロセッコと言える。最近、こうした辛口のプロセッコが増えているが、並の生産者では残糖を減らした時にバランスがとれなくなるが、これはバランスのいいワインに仕上がっている。
白ワイン・オブ・ザ・イヤー
コッリ・ディ・ルーニ・ヴェルメンティーノ・エティケッタ・ネーラ2018 / ルナエ・ボゾーニ
今年最高の白ワインは、リグーリアのヴェルメンティーノのワイン。ヴェルメンティーノは地中海で幅広く見られる品種で、サルデーニャやトスカーナでも栽培されている。リグーリアのヴェルメンティーノは、トスカーナやサルデーニャと比べるとミネラル感が強い。このワインは、リグーリアのヴェルメンティーノとわかる特徴を持っている。若いワインなので、香りはヴェルメンティーノのフローラル感、味はリグーリアのテロワールの特徴が出ている。毎年トレ・ビッキエーリを取るワインだが、2018ヴィンテージは、冷涼な気候の影響で、この産地ならではの品種の特徴がうまく出た。ガンベロ・ロッソはおいしいワインを選ぶだけでなく、ワイン造りの傾向を読み取って発信する役割を持つ。フレッシュ&ミネラリーというスタイルはいまイタリアで求められているワインの傾向を示している。
社会的連帯プロジェクト・アワード
シチリア・カタラット・テッレ・ロッセ・ディ・ジャッバショ 2018 /
カンティーナ・チェントパッシ
社会的連帯プロジェクト・アワードとは、優れたワイン造りをしていることはもちろんだが、その上で、社会的に有意義な活動をしているワイナリーを表彰する賞。イタリアでは、マフィアなど組織犯罪で逮捕された人の財産は没収されることになっている。このワイナリーは、若者が集まって、マフィアから没収された40ヘクタールのブドウ畑でワイン造りを行っている。このプロジェクトは、イタリア全土での取り組みがあり、ワイン以外にも農作物を生産している。このワインはシチリアの土着品種カタラットのもの。パレルモの近くの丘陵地帯で生産される。カタラットはアロマティコ(芳香性のある)な品種ではないけれど、フレッシュでミネラルが感じられるワイン。シチリアの畑の特徴がよく出ている。
ブドウ栽培家・オブ・ザ・イヤー
ヴェルディッキオ・デイ・カステッリ・ディ・イエージ・クラッシコ・リゼルヴァ・
イル・カンティコ・デッラ・フィグーラ 2016 / アンドレア・フェリーチ
マルケ州のヴェルディッキオのワイン。イル・カンティコ・デッラ・フィグーラは、単一畑ワイン。この地域の傑出したワインで、トレ・ビッキエーリのいまや常連。アンドレア・フェリーチは創設者の名前。いまは息子のレオナルド・フェリーチが率いるが、この38才の若者がブドウ栽培に力を入れており、ほとんどの時間を畑で過ごしている。その姿勢に感銘を受け、賞を与えた。ヴェルディッキオは若飲みが多いが、このワインは長期熟成を目指している。ボディがしっかりして、熟成によって複雑さを増している。フレッシュな飲み口だが、何年も熟成させるに値するワインだ。
ロゼワイン・オブ・ザ・イヤー
チェラスオーロ・ローザローゼ 2018 / トッレ・デイ・ベアーティ
ロゼワインは世界的に伸びていて、イタリアでも輸出が増えつつある。イタリアでは、プーリア州、アプルッツォ州で、高品質のロゼが造られる。ロゼのワインはフランスのロワールのような色の薄いものが多いが、イタリアでは赤に使いロゼが主流である。ロゼを示すチェラスオーロというワイン名もチェリーのような色から来ている。このワインは、南イタリアの代表的名赤ワイン品種、モンテプルチアーノ種100%で造られる単一品種のワイン。香りは赤、味は白、口のなかで広がりあり、豊かでタンニンがデリケートなワイン。
伸び盛りのワイナリー・オブ・ザ・イヤー
グリニョリーノ・ダスティ2013 / テヌータ・サンタ・カテリーナ
トレ・ビッキエーリを初めて取ったワイナリーの中から選ばれる賞。今年は2000年代初頭からワイン生産を始めて、地元の固有品種に力を入れているピエモンテ州のテヌータ・サンタ・カテリーナが選出された。オーナーはミラノの弁護士で、ミラノで仕事をしながら、ピエモンテに通って、おじいさんの土地でワイン造りを行っている。ピエモンテのワインというとランゲ地区のバローロ、バルバレスコが有名だが、このワイナリーはアスティ県でグリニョリーノというマイナー品種に力を入れている。グリニョリーノは若いうちに飲むワインが多いが、ここでは熟成したグリニョリーノにチャレンジしているのがめずらしい。ブドウを厳しく選抜し、いいワインを造って、じっくり熟成させて、2013年ヴィンテージをいまリリースする。グリニョリーノはタンニンが強く、バランスを取って長期熟成するのは難しかったと思われる。このワインは香りを嗅ぐと熟成した印象だが、口に含むとタンニンが厳格で非常に若々しい印象を受ける。ちょっとだけ低めの温度で試すと特徴がよくわかる。こうしたワイン造りは、ガンベロ・ロッソにとってもうれしい発見であった。
コストパフォーマンス・ワイン・オブ・ザ・イヤー
バルベーラ・ダスティ・ラヴィニョーネ 2018 / ピコ・マッカリオ
ピエモンテ州アスティ地区で近年急速に伸びているワイナリーである。60ヘクタールのまとまった畑を持ち、いくつもの種類のバルベーラワインを生産している。このワインは、ベースグレードのワインで、バルベーラの特徴がよく出ている。タンニンが少ないが酸が強く、森の果実やチェリーの風味がある。樽は使わず、セメント槽とステンレスタンクで発酵、熟成。フレッシュでクリーンなワイン。イタリアでは10ユーロしない。日本でも2000円以下。そんなワインがトレ・ビッキエーリを獲得した。新しい発見である。
持続可能なブドウ栽培アワード
プリミディーボ・ディ・マンドゥリア・リリカ 2017 / プロデュットーリ・ディ・マンドゥリア
サスティナブルというコンセプトには、ガンベロ・ロッソも力を入れている。ビオディナミ、ビオロジコといろいろあるが、それらも持続可能という点では十分ではないと考えている。ガンベロ・ロッソは、それらを数値化して、持続可能かどうかの指標を作って評価している。いま、ビオとか、自然派とかが、流行っているが、基準が非常にあいまいで、言った者勝ちの状態である。ガンベロ・ロッソでは、認証団体が認証したものだけを記載し、科学的な根拠のある報道を行っている。このワイナリーは、ブーリア州の生産者協同組合で、10年前から持続可能な農法に取り組んでいる。協同組合というと生産量ばかり追うイメージだが、ここは組合でありながらも理想を持って頑張っている。このプリミティーボのワインは、タンニンが少なく、果実味豊か、グリセリン豊か。プリミティーボのワインはアルコールが高くなりがちだが、このワインはバランスがとれて飲みやすい。
ワイナリー・オブ・ザ・イヤー
キャンティ・クラシコ・グラン・セレッツィオーネ・イ・リアルツィ /
テヌータ・ペラーノ,フレスコバルディ
フレスコバルディは、各地にいろんなワイナリーを持つ著名な生産者。キャンティ地区のルフィーノ、ニポッツァーノ、ポミーノ、ボルゲリにはオルネッライア、モンタルチーノのカステルジョコンド、フリウリのアテムス。そして最近、キャンティ・クラッシコ地区にもワイナリーを買った。もともと高品質のワインを造るワイナリーだか、ここ5年ぐらいでかつての濃厚なワインから、洗練されたワインに変化してきた。その変化と、それぞれのワイナリーでも傑出した成果を上げているということで、2020年のワイナリー・オブ・ザ・イヤーに認定された。代表ワインとして選ばれたのは、新しく購入されたテヌータ・ペラーノのキャンティ・クラシコ。クリーンで優美で、繊細さのあるワインで、キャンティ・クラシコの中でも傑出している。
赤ワイン・オブ・ザ・イヤー
カルミニャーノ・リゼルヴァ 2016 / ピアッジャ
赤ワイン・オブ・ザ・イヤーに選ばれたのはカルミニャーノ。カルミニャーノはトスカーナ州ブラート県のワイン。トスカーナのサンジョヴェーゼ種にカベルネなど外国品種を混ぜることに特徴がある。1980年代から流行ったスーパー・タスカンと呼んでもいいワインだが、この地域の外国品種の栽培は18世紀からの歴史がある。当時のトスカーナ大公は、フランスとオーストリアに由来のあるハブスブルグ系で、この地に狩りのための別荘を持ち、そこに自国のブドウ品種を持ち込んだ歴史がある。カベルネも200年以上に渡って栽培され、この地に根付いている。このワインは、サンジョヴェーゼ70%、カベルネ・フラン20%、残り10 %が、カベルネ・ソーヴィニヨンとメルロー。5 ヘクタールの畑で、生産量は 10万本。このワイナリーはエノロゴも有名だが、オーナーのマウロ・ヴァンヌッチも栽培家としてすばらしく、ブドウ栽培家・オブ・ザ・イヤーにも値する。最良のブドウから作られたワインは、新樽熟成で、濃厚、ボディがあり、バランスがいい。
甘口ワイン・オブ・ザ・イヤー
トレンティーノ・ヴィーノ・サント2003 / トブリーノ
北イタリアのトレンティーノ地方、ガルダ湖畔の「湖の渓谷」と言われる地域のワイン。山に近く、湖があり、比較的温暖だが、湖からの風が吹き、朝と夜で風向きが変わる、ミクロクリマのゾーン。このエリアだけで造られるノジオーラ種の甘口ワイン。ブドウをまず畑で陰干しし、さらに室内でも陰干し、そのあと樽熟成を重ねて、16年かけてリリースされる。生産量はわずか2000本。甘さを残すが、樽の中での微酸素供給で様々なニュアンスを身につけている。このワインも共同組合の生産で、組合は主にシャルドネ、ピノ・ネロからスパークリングワインを生産しているが、甘口ワイン造りも、地元の伝統ワイン守るために、1950年代から細々と続けられてきた。湖の谷の偉大なテロワールの伝統を象徴するワインだ。