ストーリーのあるワインと暮らし

Wine & Story

ワイン・ランキング イタリアのクオリティを語る
レジェンドワイン10本

(2017.01.01)

Barolo

イタリアワインの多様性とクオリティを示す代表的なワインをセレクトした。銘醸地の伝統品種で伝統的な醸造法で造られたワイン。伝統品種を新しい醸造法で造り変えたワイン。また、外来品種で造られた革新的なワイン。この10本は様々なスタイルのイタリアワインの代表である。また、それぞれが歴史を作ってきた伝説的なワインでもある。これらをひと通り飲んでいけば、いまのイタリアワインの水準と幅が理解できるはずだ。
 
バルバレスコ/ガイア
イタリアのフラッグシップ
イタリアのクオリティ・ワインを語るとき、真っ先にあげねばならぬ1本である。バルバレスコとは、ピエモンテで造られる長期熟成型の赤ワイン。すぐ隣のエリアで造られるバローロ同様、ネッビオーロという土着の品種で造られる。ガイアのバルバレスコは、その最も有名な1本であり、70年代からイタリアワインの最高峰として君臨し続ける。

ガイア社のオーナー、アンジェロ・ガイアは、1859年からバルバレスコ村でワイン造りを営んできた家に生まれ、60年代に家業に就いた。以後、新しいテクニックを次々に導入し、イタリアワイン・ルネッサンスと呼ばれる改革の道を拓いた。アンジェロの目指したのは、ワールド・クラスのワイン。改革はマーケティング面にもおよび、海外でのイタリアワインの評価も高めた。ガイアのバルバレスコは、ネッビオーロ本来の力強さを持ちながらも、エレガント。そして美しく香る。飲み頃のヴィンテージなら、これほどまでに典雅なワインがあるものか、と唸らされる。

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Barbaresco/Azienda Agricola Gaja
バローロ・リゼルヴァ・モンフォルティーノ/ジャコモ・コンテルノ  
王道を行く伝統バローロ
バローロはピエモンテ州でネッビオーロ種から造られる赤ワインである。19世紀から「ワインの王にして、王のワインである」と語られ、イタリアで最も偉大なワインとされてきた。この1本は、その伝統のど真ん中に位置するバローロの王とも呼べる逸品である。もともとバローロは、強すぎる酸とタンニンが和らぐまで、10年以上の熟成を要するワインだった。それが敬遠され市場で人気を落とした時期もあったが、近年、バリック熟成のモダンなワイン造りをするバローロ・ボーイズの登場もあり復活を遂げている。

そんな中で、ジャコモ・コンテルノは、いまなお伝統的な手法でワイン造りを続けるワイナリーだ。悪いものからいいものはできないというもっともなポリシーから、ブドウの質を高め、さらにいいものだけを選び抜く。醸造法は昔のまま。木製の開放桶で5週間もの発酵、大樽での熟成は7年以上にも及ぶ。そのバローロは、いまなお熟成に時間を要するスタイルのままだが、間違いなく最高水準のワインである。よいヴィンテージの数十年寝かしたワインは、これほどまでに香るのかと驚かされることがある。

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Barolo Riserva Monfortino/Azienda Vitivinicola Giacomo Conterno

レ・ペルゴーレ・トルテ/モンテヴェルティーネ
キャンティの反逆者

毎年変わる女性の顔のエチケットで有名なワインである。このワインはキャンティ・クラッシコエリアの中心で造られるが、キャンティを名乗らずテーブルワインの格付けでリリースされる。いまでこそ質の向上を遂げたキャンティだが、80年代後半までは、けっしてほめられたワインではなかった。かつて、トスカーナの土着品種サンジョヴェーゼは、強いタンニンのせいで熟成に時間がかかり、飲みやすいワインになりにくかった。それを改善するために考え出されたのが白ブドウの混醸である。それが伝統的な醸造法として1996年のワイン法の改正までで引き継がれたことに問題があった。

異業種から転身し、質の高いワイン造りを目指すセルジオ・マネッティは、おかしな法律で縛られたキャンティと決別し、サンジョヴェーゼだけで醸造した。それが、レ・ペルゴーレ・トルテ。ファースト・ヴィンテージは1977年。これが、トスカーナで始めて造られたサンジョヴェーゼ100%のワインである。従来のキャンティ・クラッシコとは一線を画すエレガントさを持ち、とても香るのが特徴だ。現在、このワイン造りは多くの生産者に受け入れられ、キャンティ・クラッシコの典型的なスタイルとなっている。

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Le Pergole Torte/Azienda Agricola Montevertine

ブルネッロ・ディ・モンタルチーノ/カーセ・バッセ 
感覚派のブルネッロ

ブルネッロ・ディ・モンタルチーノは、バローロと並ぶイタリア赤ワインの最高峰である。ブルネッロ種と呼ばれるサンジョヴェーゼのクローンによる長期熟成型のワインで、トスカーナ州モンタルチーノ周辺で造られる。その最高峰に位置付けられるのが、カーセ・バッセだ。

オーナーのジャンフランコ・ソルデーラは、偏屈で知られ、我が道をゆくタイプ。ミラノで保険業を営む傍ら、週の半分をモンタルチーノで過ごし、斬新なワイン造りを行ってきた。といっても最新式の醸造プラントを建てたわけではない。苗木をすべて植え直し、畑の周りに鳥の巣箱を置き、バラを植え、ミツバチを飼った。畑の生態系を整えるためだ。彼のワイン造りは自然とともにある。醸造についても同じこと。発酵は木製漕で行い、温度管理せずに自然に任せる。その後、スロヴェニアオークの大樽に入れてゆっくり熟成させる。

ソルデーラは、ワイン造りにおいていちばん重要なのは、造り手自身の感覚だという。モンタルチーノに滞在する間、日々カンティーナに入り、ワインと対話する。そうして造られたワインは、ブルネッロの枠を超えた特別な素性のよさを感じさせるのだ。

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Brunello di Montalcino/Azienda Agricola Case Basse

サッシカイア/サン・グイド
世界を唸らせたカベルネ

イタリアワインの実力を最初に世界に知らしめた1本といえば、サッシカイアであろう。ワイナリーは、トスカーナの海沿いの地、ボルゲリにある。ボルゲリは、サッシカイアの登場まで、なんの取り柄もない土地だった。オーナーのインチーザ・デッラ・ロケッタ家は、貴族の家柄。無類のワイン好きだった先代は、戦前から品質の高かったボルドーを好んで飲んでいた。ところが第2次世界大戦でワインの輸入が滞ったため、1944年にカベルネ・ソーヴィニヨンの苗木を植え、以後、自家消費用にワイン造り続けることになる。それを傑出したワインに仕上げたのは現当主のニコロ。いとこであるフィレンツェのワイン貴族ピエロ・アンティノーリと、エノロゴのジャコモ・タキスの協力を仰いだという。

そうしてできたワインは、トスカーナ産カベルネ・ソーヴィニヨンの奇跡として、伝説的なワインとなった。ニコロによれば、「サッシカイアは、いい畑によって生み出された、タンニンが柔らかい高品質のワインである。人はよくボルドーと比較するが、トスカーナならではの味わいを持つ、まったく別ものである」。彼は、「ワイン愛好家の大半が、ワインの味をボルドーで覚えているが、まっさらな状態で飲んだら、ボルドーのシャトーものよりサッシカイアを選ぶはずだ」というが、私も同じ意見である。

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Bolgheri Sassicaia/Tenuta San Guido

バルベーラ・ダルバ・リゼルヴァ・ヴィニェート・ポッツォ・デッランヌンツィアータ/ロベルト・ヴォエルツィオ
バルベーラの限界を超えた1本

ロベルト・ヴォエルツィオといえば、バローロ・ボーイズの大スター、それが何故にバルベーラなのか。バルベーラと言えば、ピエモンテでは2級品種、バローロ、バルバレスコを生むネッビオーロに対して、デイリーワインの品種として扱われてきた。だが、この品種、実にチャーミングな果実味を持ち、バリック熟成によって適度なタンニンを与えられると、1級のワインに変貌を遂げる。それでもまだ1級のバローロと同列に比べるのははばかられたが、1996年ヴィンテージから登場したこのワインには驚かされた。イタリアのワインガイド「レスプレッソ」の初版である2002年版で、1998年ヴィンテージが全ワイン中の最高得点を獲得し、最上級のバローロをも凌駕する評価を得た。

バルベーラの魅力はフレッシュな果実味、サッシカイアの項と同じ論法になるが、もし、なんの先入観もないまっさらな状態でブドウ品種を選んだら、カベルネでもピノ・ノワールでもなく、まずバルベーラが選ばれるはずという意見もある。(ラ・スピネッタのジョルジョ・リヴェッティ)。その美質を、ロベルト・ヴォエルツィオが、バローロ造りと同じ厳しさで収穫量を極端に抑えて磨き上げた。マグナムのみ1500本しか生産されない、きわめて貴重な1本である。

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Barbera d’Alba Riserva vigneto Pozzo dell’Annunziata /Azienda Agricola Roberto Voerzio

チェルヴァーロ・デッラ・サーラ/カステッロ・デッラ・サーラ
シャルドネもイタリアの時代?
カステッロ・デッラ・サーラは、1385年からワイン造りを行っているというフィレンツェのワイン貴族、アンティノーリが経営するワイナリーである。その当主ピエロ・アンティノーリは、アンジェロ・ガイアと並んでイタリアワインの改革をリードし、エノロゴのジャコモ・タキスと二人三脚で、ティーニャネッロ、ソライアを仕上げ、スーパータスカンブームに火を付けた。ピエロがその次に取り組んだのが、高級白ワイン造りである。古くからの白ワイン産地であるオルヴィエート近郊にワイナリーを開いた。

チェルバーロ・デッラ・サーラは、外来品種であるシャルドネに、土着品種のグレケット種を10%程度ブレンド。熟成だけでなく発酵の段階からバリックを使用している。いまイタリアの白のクオリティワインの中核を占めるのは、シャルドネのワインである。それもバリック熟成で、樽香のあるマッシブなタイプだ。これはここ20年ぐらいの流行で、インターナショナルな商品としてもてはやされてきた。チェルヴァーロは、数多くあるシャルドネ・バリックスタイルのワインの中でも、フレッシュで果実味のあるエレガントなワインである。

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Cervaro della Sala Umbria/Castello della Sala
ヴィンテージ・トゥニーナ/イェルマン
エレガント・スタイル
イェルマンのあるフリウリ・ヴェネチア・ジュリア州は、オーストリアに帰属していた時代から白ワインの銘醸地として名高く、いまでもイタリアの高品質白ワイン、最大の産地である。年間を通じて気温が低めで、栽培されるブドウは、トカイ・フリウラーノ、リボッラ・ジャッラなど土着品種の他、リースリング、シャルドネ、ソーヴィニヨン・ブランなど、多くの外国品種が根付いている。

イエルマンが名声を得たのは、4代目にあたる現オーナーのシルヴィオの代になってから。もともと量り売りのワインを造っていたが、自前のブランドで瓶詰めを始め、同時に、それまでの田舎っぽいワインをブレンドによって洗練させた。中でもヴィンテージ・トゥニーナは、最も重要なワインと位置付けられ、シルヴィオの感性を表現したワインである。遅積みしたソーヴィニヨン・ブラン、シャルドネ、リボッラ、マルヴァジア、ピコリット、5品種をブレンドし、上品で繊細なワインに仕上げている。イエルマンには、もうひとつ、ドリームというシャルドネのバリック熟成の傑作ワインがあるが、どちらもあくまでもエレガント。そういう控えめなスタイルでありながらも、長年イタリアを代表する白ワインと評価され続けている。

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Vintage Tunina/Azienda Agricola Vinnaioli Jermann
フランチャコルタ・キュヴェ・アンナマリア・クレメンティ/カ・デル・ボスコ
イタリアン・シャンパーニュ

カ・デル・ボスコは、イタリアのシャンパーニュと言われるフランチャコルタのトップ・ワイナリー。フランチャコルタとは、同名のエリアで、シャンパーニュ方式で造られたスパークリングワインのこと。このフランチャコルタは、60年代に始めてブドウが植えられ、わずか20年でイタリアの有力ワイン産地へと成長した驚愕のストーリーを持つ。

カ・デル・ボスコのワイン造りは、極めて合理的である。合理的というと機械化が進んでいるように聞こえるが、実態はまったく逆である。人の手でやるところはやる、だめなものは容赦なく捨てるという考え方が徹底されている。手摘みで収穫のあと、最上級のものだけがプレスにまわされ、コンピータ管理されたステンレスタンクで発酵、マロラクティック発酵をバリックで行ったあと、熟成に回す。熟成期間は、シャンパーニュよりも長く25カ月、ヴィンテージ付きは37カ月である。カ・デル・ボスコで造られるフランチャコルタは6種類、その最上位に位置付けられるヴィンテージ付きが、キュヴェ・アンナマリア・クレメンティである。シャルドネ35%、ピノ・ビアンコ35%、ピノ・ノワール30%の配合で、第1級のシャンパーニュと較べても、一際クリーンで骨格があり、味わいも濃い印象だ。細やかで持続性のある泡にも特徴がある。

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Franciacorta Cuvee Annamaria Clementi/Azienda Agricola Ca del Bosco

ヴィン・サント/アヴィニョネージ
デザートワインの傑作

アヴィニョネージは、トスカーナの赤ワイン、ヴィーノ・ノービレ・ディ・モンテプルチアーノの最も名の知れた生産者である。このワイナリーの名声を高めるもうひとつのワインが、ヴィン・サントである。ヴィン・サントとは、食後にビスコッティーニという堅いビスケットを浸して楽しむ甘いデザートワインだが、アヴィニョネージのヴィン・サントに限っては、ビスコッティーニを浸すなど論外。そう思わされる出来映えである。

ここのヴィン・サントは、白と赤の2種類。赤はオッキオ・ディ・ペルニーチェと名付けられている。使用するブドウは、赤がプルニォーロ・ジェンティーレ100%、白はグレケット、マルヴァジア、トレッビアーノの3種混醸である。完熟したブドウを6カ月間陰干しし、10%の重さになったところでプレス、果汁を50リットルの小さなオーク樽に目一杯詰め、一切空気に触れさせないで封印する。熟成期間は、白で8年、赤で10年、絶対封は開けず、温度変化の激しい屋根に近い場所に置き、ただひたすら時が過ぎるのを待つ。そうしてできたワインは、ブドウのエッセンスの結晶とも言うべきもので、厚みのあるボディで、ドライフルーツやスパイスの香りがかぐわしい、イタリアワイン文化のひとつの頂点といえる。

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Vin Santo Occhio di Pernice、Vin Santo/Cantine Avignonesi