カリフォルニアスタイル現地の専門家に聞く
カリフォルニアワインの最新トレンド
(2014.07.01)
アルコールが低めでやさしい味わいのワインと料理とがみせるよい相性や、カリフォルニアでは知られていなかったブドウ品種のワインとのワクワクするような出会いなど、カリフォルニアならではのワインの新しい愉しみ方を、ベイ・エリアを中心に活動するふたりの専門家に聞いた。
料理に合わせるならカベルネよりピノ・ノワール、
ビッグなワインよりミディアム・クラスがよいマリアージュを生む
ベイ・エリアの老舗ワイン商、K&Lワイン・マーチャントのヘッド・ソムリエールであると同時に、日本酒の買い付け担当をしているメリッサ・スミス(Melissa Smith)さん。日本酒ソムリエの資格も持ち、何度か来日もしているという彼女に、料理とワインについて聞いてみた。
カリフォルニアではワインが身についているというよりは、まだ、いろいろ知りたい、試してみたいというユーザーが多く、バイ ザ グラスが好まれている。これからは、季節的にもロゼがお薦め。そのやさしい味わいが、カヴァーできる料理の範囲を広くしてくれるという。
カリフォルニアで、料理に合わせてワインを愉しむスタイルが定着したのは、実は5年くらい前から。というのも、現在もまだそうなのだが、ワインといえばカベルネ・ソーヴィニョン、という時代が長く続いたのが理由だ。カベルネのはちきれんばかりの果実味溢れるビッグなワインは、料理と合わせるには少し難しかった。それが数年前から、ミディアム・クラスのワインにシフトし、ピノ・ノワールが台頭してきた。彼女自身、料理と一緒にワインを楽しむ、このような流れを好ましく思っている、とのこと。当初、料理人を目指し、CIA(カリナリー・インスティテュート・オブ・アメリカの略。アメリカにある世界最高水準のレストラン専門学校)の出身でもあるスミスさんの言葉には説得力がある。
また、バイ ザ グラスに欠かせないアイテムとして、彼女が教えてくれた新兵器が、コラヴァン。コルクを抜かずにキャップシールの上から針を刺し、ワインを注いだ分、アルゴン・ガスがボトルに注入、酸化を防止するというもので、残ったワインをフレッシュに保つという点で、かなり強力なアイテムのよう。確かに取材先のワイナリーでもよく見かけたし、カリフォルニアのレストラン、ワイン・バーでは、いまや定番となっているそうだ。
お薦めはこれまでカリフォルニアになかったスタイル
珍しい品種や低めのアルコールのワイン
40年間で200人の取得者しかいない、マスター・ソムリエの保持者、ジェフ・クルース(Geoff Kruth)さん。ギルド・オブ・ソムリエ(ワインに関するプロフェッショナルの団体)の運営に携わる他、ソノマはロシアン・リヴァー・ヴァレーにある1ッ星のオーベルジュ、ファームハウスのワイン・ディレクターも務めている。
ソムリエとしては、カリフォルニアではヴァリエーション、多様性といったことを体感してほしいとし、ワクワクさせてくれる珍しいブドウ品種のワインがお薦めとのこと。具体的には、イタリアの白ブドウ、ヴェルメンティーノや、赤用のドルチェット、さらにフランスのジュラ地方で栽培されてきたトルソーなどといったブドウ品種で、実際、そうした品種のワインに挑戦するワイナリーが出てきている。
また、つくり手が作為的にブドウ品種をブレンドするのではなく、もともと畑で一緒に植えられていた品種からワインをつくるフィールド・ブレンドも大きな可能性を秘めているという。例えば、1886年から1920年に植えられたセミヨン、ミュスカデル、パロミノ種からつくられた白は、独特の風味と味わいで、シャルドネに慣れた口にはとても新鮮だ。
ピノ・ノワールでも、よく見られるアルコールが14パーセント以上もある強いものではなく、品種本来のエレガントさが感じられる12パーセント台のワインをぜひ試してもらいたいという。果実のピュアさや、全体のバランスに、嬉しい発見があること請け合いだ。彼自身、ロシアン・リヴァー・ヴァレーのワイナリーで、共同生産者としてピノ・ノワールの生産もおこなっているが、手がけたワインのアルコールは12パーセント台とのこと。
ジェフによれば、ソノマは、ナパに較べ、涼しい気候といったテロワール的な点ばかりが強調されるが、その大きな可能性と魅力は、金額的な面にもあるという。それは、ナパより土地が格段に安いこと。それが、新しいワインづくりにチャレンジしやすい環境をつくっていると、新しいワインがソノマから生まれる理由を語ってくれた。