ストーリーのあるワインと暮らし

Wine & Story

カリフォルニアスタイル 最も有名なワイン産地
ナパ・ヴァレーを行く

(2014.07.20)

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カリフォルニアで最も有名なワイン産地ナパ・ヴァレーはサンフランシスコから車で1時間半の距離で、広さは南北45キロメートル、東西の幅は平均で5キロメートルほどとコンパクトななかに600のワイナリーが点在する。そのためワイン・ツーリズムが人気で、週末に限らずウィークデーもワイナリー巡りのヴィジターが多く、気軽に訪れることができるのが大きな魅力。
ベリンジャー・ヴィンヤーズ (Beringer Vineyards) Napa
創業は1876年と現存するナパのワイナリーでは最も歴史あるひとつ

ナパの中心地、セントヘレナの町の市街地を抜けるとすぐに現われるワイナリーがベリンジャー。ナパで最古の歴史を誇るワイナリーのひとつで、1876年ドイツからわたってきたベリンジャー兄弟が創業。禁酒法時代には多くのワイナリーが閉鎖に追い込まれるなか、同社は教会のミサ用ワインの生産などで醸造を続け難局を乗り切った。ワイナリーではそんな歴史を当時掘られたカーヴ内に展示された醸造機器などでたどることができ、連日、多くのヴィジターでにぎわっている。

同社が30年ほど前に発表した、世界的ヒット商品がホワイト・ジンファンデル。透明感のあるサーモン・ピンクの美しい色合いの、きれいな酸味がほのかな甘味と合わさる非常に口当たりのいいロゼで、女性好みのワインといわれるが、実は男性にも根強いファンが多い。その名の通り、ブドウはジンファンデルを使用(年によっては少量のマスカットも用いる)。4時間ほどスキン・コンタクトをおこない、きれいなロゼ色になったところで、果皮を引き上げ、ステンレスのタンクで発酵、魅力的なホワイト・ジンファンデルができあがる。なお、よりフレッシュさが愉しめる、発泡性のスパークリング・ホワイト・ジンファンデルもある。

現在ワイナリーでは20種以上のワインを揃えているが、なかでもベリンジャーの名声を高めているのが、ハイ・エンドのアイテムである最上級カベルネ・ソーヴィニョンのプライヴェート・リザーヴ。1977年のヴィンテージからリリースが開始され、凝縮感がありながらもエレガントさも感じさせてくれる、バランスに優れた赤。これは専用の区画から生まれるわけではなく、畑でのブドウの状態、搾汁、アルコール発酵、樽熟成等々の各段階で、セレクションにセレクションを重ねた結果、生み出される。平均的な年であれば10000ケースの生産量があるものの、09年は5000ケース、08年にいたっては1000ケースという数量しかなかったが、これはワイナリー全体の生産量の1パーセント以下という数字。130年になんなんとする同社の歴史が結実したワインでもある。

大ヒット商品のホワイト・ジンファンデルとフラッグシップのプライヴェート・リザーヴ
大ヒット商品のホワイト・ジンファンデルとフラッグシップのプライヴェート・リザーヴ
プライヴェート・リザーヴを生み出す、女性ワイン・メーカーのローリー・フック
プライヴェート・リザーヴを生み出す、女性ワイン・メーカーのローリー・フック
人力によって掘られたカーヴは、現在も樽熟庫として使用されている
人力によって掘られたカーヴは、現在も樽熟庫として使用されている
かなり古い醸造機器も見られる
かなり古い醸造機器も見られる
エチュード・ワインズ (Etude Wines) Napa
ナパとソノマにまたがるカーネロスの特性を生かしたワインづくりをおこなうワイナリー

ナパで最も南、カーネロスにワイナリーと畑は位置し、上質なカベルネ・ソーヴィニョンもあるものの、ピノ・ノワールで高い評価を得ているエチュード。エチュードとはフランス語で「習作」「練習曲」の意、カリスマ・ワイン・メーカーとして名を馳せたトニー・ソーターが1982年に設立した。ワイナリーはナパ側にあるものの、畑のほとんどはソノマ側のカーネロスにある。カーネロスはナパとソノマ、双方の南部にまたがる産地で、すぐ南にあるサン・パブロ湾からの寒冷な海風の影響を受け、カリフォルニアでも最も冷涼な産地のひとつ。その北西端、ソノマ・マウンテンの麓の120ヘクタールの広さがある自社畑グレース・ベンワ・ランチからブドウを調達、ワインづくりをおこなっている。

ワイン・メーカーを務めるのはジョン・プリースト(ソーターは現在もアドヴァイザーとして関わっている)、ブドウの栽培は環境に配慮しつつ、オーガニックでおこなっている。ワイナリーの生産量の半分を占めるピノ・ノワールは、選果の後、一部は全房で仕込み、低温のマセレーションの後ステンレスのタンクで発酵、3分の1の新樽も用い12~14ヵ月ほど熟成させ瓶詰め。100パーセントのピノ・ノワールからつくられるロゼは4ヵ月ほど樽熟成もさせていて、ワインはチキンなどの料理に合わせて愉しみたい、しっかりしたストラクチャーのものだが、1200ケースほどの生産量しかないため、1年経たずに売り切れてしまう。

エチュードではピノ・グリ、ピノ・ブラン、それにシャルドネの白3種にピノ・ノワール5種類を産するが、実はカベルネ・ソーヴィニョンもピノと同じく5種類ある。ナパの他にオークヴィル、ラザフォードなど4つのキュヴェをリリースしていて、これらのカベルネはピノに勝るとも劣らない人気、評価、価格なのである。

ワイナリーのエントランス
ワイナリーのエントランス
ワイナリーで産する赤、白、ロゼ。ロゼの色調が際立つ
ワイナリーで産する赤、白、ロゼ。ロゼの色調が際立つ
テイスティング・ルームがある建物
テイスティング・ルームがある建物
ワイナリーの周りに広がるピノ・ノワールの畑
ワイナリーの周りに広がるピノ・ノワールの畑
マイナー・ファミリー・ワイナリー (Miner Family Winery) Napa
銘醸畑のぶどうを用い、高い酒質のワインを生み出す

ナパの中心部、オークヴィルにはモンダヴィやオーパスなど有名ワイナリーが軒を連ねるが、その東の高台にマイナー・ワイナリーはある。設立は1998年と若いものの、当初から最上質のぶどうにこだわり、またカベルネ・ソーヴィニョンなどメジャーな品種のワインに加え、カリフォルニアでは珍しい白のマルサンヌや赤のテンプラニーヨ、サンジョヴェーゼ(赤だけでなくロゼもある)等々を生み出すワイナリー。

カリフォルニアでは、自社畑を所有しワインづくりをおこなっているワイナリーもあるものの、多くはブドウを買い入れ、ワインに仕上げている。そして、高いクオリティのブドウを生む畑はその名前がしっかりとラベルに記載されるが、このマイナー・ワイナリーが産するほとんどのワインも畑名が記されている。例えばピノ・ノワール、ラベル上部にゲイリーズ・ヴィンヤード、下部にサンタ・ルシア・ハイランズ・ピノ・ノワールと続くが、このワインは、モントレー・カウンティのサンタ・ルシア・ハイランズにあるゲイリーズ・ヴィンヤードからのピノ・ノワールを使用しているということ。ゲイリーズと複数形になっているのは、あのピゾーニ・ヴィンヤードを拓いたゲイリーと友人のゲイリー・フランシオーニ、ふたりのゲイリーが拓いたことに由来。現在カリフォルニアでトップ・クラスのピノ・ノワールを生むと目されている畑だが、供給されるワイナリーは限られている。

他にもシャルドネ・ナパ・ヴァレー、これは複数の区画のブレンドのため個々の畑名が記されていないが、実際はハドソン・ヴィンヤードやハイド・ヴィンヤードなど、これまた一流とされる畑産のブドウ(シャルドネはこれら単一畑のワインもリリースしている)からつくられている。このように、クオリティの高い区画からのブドウにこだわり、ワインに変身させるのはワイン・メーカーのゲイリー・ブルックマン、カルトに連なるグレース・ファミリーの醸造長でもある。

ワイナリーは斜面を利用して建てられている
ワイナリーは斜面を利用して建てられている
丘の中腹に掘られた樽熟庫の入り口
丘の中腹に掘られた樽熟庫の入り口
リリースされるワインの一部。生産されるワインは20種類以上におよぶ
リリースされるワインの一部。生産されるワインは20種類以上におよぶ
梱包資材がところ狭しと並ぶ、ワインのパッケイジング・ヤード
梱包資材がところ狭しと並ぶ、ワインのパッケイジング・ヤード
シルヴァラード・ヴィンヤーズ (Silverado Vineyards) Napa
ワイナリー巡りの醍醐味、素晴らしい景観とワインのマリアージュ

ダイアン・ディズニー・ミラー(あのウォルト・ディズニーの長女。惜しくも2013年死去)が、伴侶とともに1981年設立したワイナリーは、ナパでも最上のワイン産地であるスタッグス・リープ・ディストリクトの小高い丘にある。ナパ・ヴァレーを大まかに捉えると南北に細長い矩形で、その東西には標高数百メートルの山地が南北に走っている。畑も中央の平坦な部分はヴァレー・フロア、両サイドの斜面に広がるのはマウンテン・ヴィンヤードと呼び、区別される。シルヴァラードが位置するスタッグス・リープ・ディストリクトはナパ・ヴァレーの東側、ヴァレー・フロアからマウンテン・ヴィンヤードに上っていく途中にあるため、ワイナリーからは素晴らしい景観が愉しめる。

産するワインは10種類以上あるが、白はシャルドネとソーヴィニョン・ブランの2種、それにサンジョヴェーゼのロゼがあるだけであとは赤。ヴァラエタルとしてメルロ、ジンファンデル、サンジョヴェーゼの3種があり、残りはカベルネ・ソーヴィニョンを軸に、100パーセント用いるキュヴェもあるものの、ボルドー・ブレンドやスーパー・タスカンタイプなど6銘柄を生産。

ワイナリーでは、必要な電力の半分はソーラー・システムでまかなうなど、環境に負荷をかけないサステイナビリティを徹底させる一方、最先端の技術も積極的に取り入れている。例えば、大型のタンクに較べよりオリとの接触が可能となるステンレスの樽(2005年産シャルドネから使用)を導入、また2010年からは、最新のコンピュータ制御による光学式ブドウ選果システムも採用するなど、意欲的な取り組みを続けている。

ワイナリーのテラスからは見事な景観が広がる
ワイナリーのテラスからは見事な景観が広がる

ステンレスの樽も導入
ステンレスの樽も導入

ワイン・メーカーのジョナサン・エマーリッチ
ワイン・メーカーのジョナサン・エマーリッチ

テイスティング・ルームに並んだワインたち
テイスティング・ルームに並んだワインたち
トレフェッセン・ファミリー・ヴィンヤーズ (Trefethen Family Vineyards) Napa
生まれるのは、しっかりした酸の熟成のきくワイン

トレフェッセンの栄光は1976年産シャルドネが世界一の座を射止めたことに始まる。1979年パリで、フランスのゴー=ミヨ誌が主催し、世界33ヵ国から330本のワインを集め開かれたワイン・オリンピックで、このトレフェッセンのシャルドネ1976が見事1位に輝いた。

ナパの最も南、オーク・ノールにトレフェッセンのワイナリーと畑はある。ワイナリー周辺のヴァレー・フロアに所有するメイン・ランチ・ヴィンヤード(産するワイン全ての品種を栽培)と、すぐ西の丘陵の麓にあるヒルスプリング・ヴィンヤード(カベルネ・ソーヴィニョンがメイン)からのブドウで生産量の全てをまかなっている。このオーク・ノールは南ではあるが海からの涼風が吹き込むため北部より冷涼な気候で、糖度は十分なものの酸のしっかりしたブドウが収穫でき、そのためカベルネ・ソーヴィニョンなどのボルドー系品種もよく育つが、加えてシャルドネやピノ・ノワールといったブルゴーニュのブドウにも最適な環境。

この地で早い時期の1889年に拓かれたワイナリーを、1968年に現在のトレフェッセン・ファミリーが購入、以来家族で切り盛りしてきた。ブドウは環境に配慮したオーガニックで栽培され、ワイナリーの電力は100パーセント、ソーラー・システムでまかなっていて、カリフォルニア・サステイナブル・ヴィンヤード・アンド・ワイナリーの認証も得ている。

その冷涼な気候の特徴がよく反映したシャルドネは上に記したように世界でトップの栄冠に輝いたが、さらにワイナリーでは10年、20年ときれいに熟成し、風味と味わいを増していくワインを目指している。ピノ・ノワールも評判で、加えてこのピノ・ノワールからつくられるロゼが人気。300ケースほどの生産量しかないため、例年、ワイナリーへの訪問客だけで売り切れてしまう。

ワイナリーのゲート。両側には延々とブドウ畑が連なる
ワイナリーのゲート。両側には延々とブドウ畑が連なる
新しい木製発酵槽が並ぶセラー
新しい木製発酵槽が並ぶセラー

創業者の孫娘、ヘイリー・トレフェッセン
創業者の孫娘、ヘイリー・トレフェッセン

プライヴェート・キッチンでのテイスティング
プライヴェート・キッチンでのテイスティング